研究概要 |
上皮系サイトカインであるinterleukin-15(IL-15)は上皮細胞やマクロファージから産生され,NK細胞,γδT細胞の増殖,活性化因子として働くことが知られている.また,IL-15は慢性関節リウマチへの関与や,抗腫瘍効果など,様々な面で注目されている. これまで我々は,感染防御の第一線を担うγδT細胞の増殖活性化に上皮系のサイトカインであるIL-15が重要な役割を果たすことを解明した.さらに,Listeria monocytogenes経口感染モデルマウスの腸管上皮間リンパ球(i-IEL)の活性化における上皮系サイトカインの関与を検討し,感染後早期に腸管上皮(i-EC)からIL-15の産生がみられたのと一致して,i-IELのinterferon-γ(IFN-γ)産生が増加していることを見いだした.これより,IL-15がL.monocytogenes経口感染においてi-IELの活性化に関与する可能性が示唆された. 局所におけるIL-15などの上皮系サイトカインの発現,産生能,リンパ系細胞の活性化を調べることは,上皮細胞とγδT細胞をはじめとするT細胞などの細胞間における相互作用の解明において重要であると考えられ,本研究では,歯肉上皮と歯肉単核球のインターラクションを解明する基礎的研究として,ヒト咽頭上皮細胞株であるKB細胞を用いて,LPSによるIL-15をはじめとする上皮系サイトカインの発現と,T細胞の活性化を検討し,歯周疾患における初期感染防御機構を解析することを目的とする. 本実験の結果,リコンビナントIFN-γ処理したKB細胞において,LPSによるIL-15発現は亢進していた.また、その培養上清によってT細胞の増殖活性も亢進していた.これらのことより,LPS刺激により活性化したKB細胞から産生されたIL-15がT細胞活性化に関与する可能性が示唆された.
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