研究概要 |
我々は、非水解性リン酸化アミノ酸の合成研究を行ってきたが、その過程においてγ,γ-difluoro-α,β-enoateが有機銅試薬により極めて容易に還元を受け、γ-fluoro-β,γ-enoateに変換されるという新反応を見出した。そこで本研究課題ではこの新反応のフルオロアルケン型ジペプチドイソスターへの合成への展開を図るとともに、還元反応の反応機構についてもあわせて検討を加えることとした。 その結果、以下に示すような成果をあげることができた。 1 δ-amino-γ,γ-difluoro-α,β-enoateを基質とし、有機銅試薬作用させることでXaa-Gly typeのフルオロアルケンイソスターが合成可能であることを明らかとした。 2 有機銅による還元反応が一電子移動機構(SET)で進行することを明らかにするとともに、反応中間体を酸化する事によりα-位に置換基導入が可能であることを明らかにした。 3 反応がSET機構で進行することに着目し、代表的一電子還元剤であるヨウ化サマリウム(SmI_2)を利用することでもフルオロアルケン型イソスターの合成が可能であることを明らかにした。 4 SmI_2による反応では中間体としてサマリウムジエノレートが生成し、これを速度論的にアルデヒドやケトンのような求電子剤で補足しα-置換イソスターの合成が可能であることを明らかにした。 5 フルオロアルケンイソスターは、3置換アルケンイソスターに分類可能であるが、このようなアルケン上の置換基はペプチドの構造を規定するうえで極めて重要と考えられる。そこで上記研究と平行して3置換アルケンイソスターの一般的合成法の確立を行った。 6 フルオロアルケンイソスターをはじめとするペプチドイソスターを導入する候補ペプチドとしてα-helix性の高いHIV-標的細胞膜融合阻害剤であるSC35EKのデザイン合成を行い、現在このペプチドへのフルオロアルケンイソスターの導入について検討を加えている。
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