研究概要 |
基質遷移状態概念に基づく酵素阻害剤開発を,耐性ウイルスに対する薬剤設計やヒト白血病ウイルスなどの難治性疾患に拡大適用するためには,固相有機合成法の確立とそのライブラリー調製への応用研究が必須である.本研究ではアスパルティックプロテアーゼの基質遷移状態阻害の中心構造となるヒドロキシエチルアミン構造の不斉合成法の確立を行うことを第一の目的とし,得られた鍵中間体を原料とするコンビナトリアル合成により阻害剤ライブラリーを構築することを第二の研究目的とした.本研究では最も研究が遅れているヒト白血病ウイルスプロテアーゼに対する阻害選択性の向上に焦点を絞った. 平成13年度の研究により,鍵中間体アミノアルキルエポキシ体の合成ルートの確立に成功した.まず,基質遷移状態ミメティックに必須となる側鎖構造と水酸基を不斉アルドール反応で構築した.側鎖構造に対応する各種カルボン酸をインダノール不斉補助剤と縮合させエステルとした後,TiCl4を用いる不斉アルドール反応によりアルデヒドコンポーネントと縮合し水酸基を導入した.ついで,得られた各立体異性体について,加水分解反応,curtius転位反応,光延反応を行って目的の鍵中間体アミノアルキルエポキシ体へと導いた. 平成14年度の研究により,HTLV-Iプロテアーゼの酵素活性評価系の確立,阻害剤ライブラリーへの合成ルートの確立,ならびに立体配置-阻害活性相関についての評価を行った.まず,別途合成したHTLV-Iプロテアーゼのホールディングを行い,酵素活性を持った天然型プロテアーゼへと導いた.ついで、HTLV-Iプロテアーゼの基質切断部位を鍵中間体のC末側に導入し,生じる二級アルコールを利用して固相担体への保持を行った.最後に,立体配置の異なる遷移状態阻害剤を固相合成し,プロテアーゼ阻害活性評価を行った.
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