研究概要 |
2年間の研究を通じて,ヒドリンダノン,ペルヒドロナフタレノン,ペルヒドロアズレノンおよび関連した系の2環性化合物を,還元的閉環反応を用いて合成する一般的方法が確立できた.アルデヒドとシクロヘキサノンあるいはシクロペンタノンの組合せ,メチルケトンとそれらの組合せ,さらに3-メチルシクロヘキサノンあるいは3-メチルシクロペンタノンを用いる系を組み合わせて種々の条件で検討した.添加物を何も加えない場合は水酸基と核間の置換基とが互いにcisとなり,プロトンソースとしてメタノールを加えるとtransになる傾向が分かった.しかしながら官能基の組合せによってはその遷移状態の安定性に依存して異なる傾向を表す場合もあった.特にペルヒドロアズレノンの場合にはこの傾向が逆になり,反応機構をさらに詳細に検討する必要がある.また立体選択制を上げる条件についてもさらに検討する必要があると考えられる.5員環を形成する反応は,Baldwin則での5-Emdo-Trigとなり不利となるため起こりにくいか,あるいは全く閉環した化合物は得られず反応系が汚くなるだけであった.本反応系は6-Endo-Trigあるいは7-Endo-Tigの系であり,ヨウ化サマリウムを用いる反応としてはこれまでにない閉環様式といえる.本形式を応用して天然物の合成をおこなった.4-エチルシクロヘキサノンを出発原料として,側鎖部分にエチル基を有するアルデヒドおよびシクロペンテノンを分子内に同時に併せ持つ化合物を閉環前駆体として合成した.このものの還元的閉環を試みると,側鎖のキラリティーに対応した8種のうち5種のみが生成した.天然物に合わせて核間の立体化学を反転させるため,異性化を2回行って正しい立体を有するヒドリンダノンを導いた.最終的にエノールトリフレートのカルボニル化によりcoronafasic acidを全合成した.
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