研究概要 |
ヒト由来肝細胞(HcpG2)を用い,tert-butyl hydroperoxideで障害を引き起こす肝障害モデルを構築し,数種の天然薬物を試験した.臨床で実際使用されている肝炎治療薬グリチルリチンが,本モデルでも用量依存的な強い活性を示した.古来,肝臓疾患に用いられてきた生薬,葛花,鶏骨草中の主サポゲノール,sophoradiolがグリチルリチンとほぼ同等の強い活性を示した.肝保護を示したウコンおよびハルウコンから,3種のクルクミノイド(Curcumin I〜III)を単離し,活性本体であることを明らかにした.マリアアザミ種子エキスならびに主成分であるフラボノリグナン(silybin, silychstin)の肝保護作用は,あまり強くはなかった.利胆作用を示す生薬オウゴンより,フラボノイド,フェニルエタノイドを肝保護物質として単離した.フラボン配糖体に活性は全く認められないことや,フラボンアグリコンA環上のピロガロール基が活性発現に大きく関与することなどを見出した.緑茶カテキン類測定の結果,肝保護作用の発現に関して,ピロガロール基とガロイル基の関与が全く異なるという知見が得られた.即ち,B環上のピロガロール基は活性上昇にあまり関与しないばかりか、やや減弱させる傾向にある一方,3位に結合するガロイル基は活性を大幅に上昇させることが明らかとなった.タンキリマメポリフェノール類の肝保護作用測定の結果,没食子酸そのものには強い活性が認められないが,そのメチルエステル体は非常に強い活性を示した.遊離カルボキシル基の保護は,活性発現に影響することが判明した.
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