研究概要 |
本研究室で同定した新規c-Myc結合タンパク質MM-1に関して以下の新知見をえた。 1).MM-1が仲介する新規c-Myc転写抑制経路とターゲット遺伝子の同定 MM-1はTIF1βのC末に直接結合し,HDAC1,mSin3などの転写コリプレッサー群をc-Mycにリクルートすることが明らかとなった.次に,estrogenによってc-Myc活性が制御できるMyc-ER細胞にTIF1βのC末のdominant-negative体を導入した.この細胞では常にc-Mycは活性化状態であった.次にc-Myc活性化化されている状態で両細胞の遺伝子発現の差をDNAマイクロアレイ法で解析した.TIF1βのC末のdominant-negative体を導入細胞で発現上昇している遺伝子がc-Myc-MM-1転写抑制ターゲット遺伝子候補であり,癌遺伝子として知られているc-fmsが同定された.c-fmsプロモーターには2カ所のc-Myc結合配列E-boxが存在し,この配列を欠損したc-fms promoterはc-Mycによる活性化は受けなかった.従って,c-fmsは通常,MM-1によりc-Mycによる転写活性化が抑制されているが,MM-1変異によりこの抑制系路が遮断され活性化され細胞癌化をもたらすと考えられる. 2).MM-1によるc-Myc分解 MM-1結合囚子としてUbiquitin ligase E3 complexに含まれるElongin B,26Sproteasome subunitであるRpt3,Rpn12がえられた.これらの事はMM-1がc-Myc分解に関与していることを示唆している.現実にMM-1を細胞に導入するとc-Myc分解が促進され,siRNAによりMM-1をノックアウトさせると逆にc-Mycは安定化された.c-Mycはユビキチン化されproteasomeにより分解されることは知られているが,その詳細は不明のままである.解析の結果,c-Myc, MM-1はSpk2,Cullin 1,Elongon Bという今までと異なった組み合わせのUbiquitin ligase E3 complex と結合しユビキチン付加を受け,MM-1がRpt3を介してproteasomeに結合し,c-Mycが分解されることが明らかとなった.c-Myc分解系は世界中でこの経路の探索が行われていたが明らかになっていなかった事より,本結果は極めて重要な成果と考えられる.
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