研究概要 |
我々はラット初代培養神経細胞を素材とし,in vitro系での種々アポトーシス様細胞死モデル実験より解糖系の酵素タンパク質であるglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)が,核内での過発現を介してアポトーシスを引き起こすタンパク質として作用する事を見い出している。パーキンソン病の病理学的所見としては,中脳の黒質緻密帯並びに橋の青斑核部位での神経メラニン含有神経細胞の減少である。更に,残存神経細胞の多くにLewy小体と呼ばれる細胞内封入体が認められる事から,パーキンソン病は主として上記ニューロン群がLewy小体を形成しながら,緩徐進行性に変性,消失していく疾患と言える。 本研究課題にて以下の成果が得られた。1.Deletion and replacement mutation解析にて,pro-apoptotic GAPDH promoter core部位の同定に成功した。2.パーキンソン病患者剖検脳での免疫組織化学実験依り,我々が作製したpro-apoptotic GAPDH抗体には,Lewy小体,特にcore部位の認識と言う特徴を有する事を見い出した。3.Lewy小体の形成とGAPDH過発現との因果関係をin vitro系(COS-7,初代培養中脳神経細胞)にて,GAPDH/α-Synuclein(Wild, Mutant型)cDNAsのco-transfection実験を実施し,共焦点顕微鏡下にてLewy body-like凝集体の形成を検討した。その結果は,両型α-SynucleinがGAPDH過発現下(即ち,アポトーシス下)主として核周辺部位に同凝集体を形成する事が判明した。4.抗パーキンソン病薬(deprenyl)がGAPDH核内移行を抑制する事を実証できた。
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