研究概要 |
初期動脈硬化病巣の形成には血管内皮細胞の傷害とその活性化が関与するというRossらの傷害反応仮説が広く受け入れられている。この仮説において重要な役割を担う酸化LDLを認識する受容体のcDNAが近年クローン化されその構造と機能が明らかにされつつある。内皮細胞の主要な酸化LDL受容'体であることが報告されているLOX-1、そしてアセチルLDLの取り込みを指標とした発現クローニングにより私共がクローン化したSREC等が内皮細胞の酸化LDL受容体である。これらの受容体は陰性荷電を持つ高分子を生体から排除する機能を担うことから種々の疾患との関与が示唆されている。 SRECの受容体活性に対して中和活性を持つモノクローナル抗体を用いた解析から内皮細胞にはSRECとは異る別の受容体の存在が示唆された。発現クローニングの手法により新たにクローン化したcDNAは新規な受容体FEEL-1(Fasciclin, EGF, Lamin-typeEGF and Link domain containing SREC-1)をコードしており、ドメイン構造から推定される蛋白質相互作用により細胞間や細胞間基質との接着やリンパ球のホーミング等に関与することが示唆された。モノクローナル抗体を用いた解析によりFEEL-1は内皮細胞の主要なアセチルLDL受容体であることを明らかにした。またFEEL-1には極めて相同性の高いFEEL-2遺伝子が存在しFEEL-2も受容体活性を有することを明らかにした。これらの新規酸化LDL受容体に関してその基質特異性を明らかにし、酸化LDLだけでなくグラム陰性、陽性細菌やAGE-BSA(Advanced Glycation End products)をリガンドとすることを明らかにした。これらのリガンド特異性は動脈硬化や糖尿病による血管障害等における病態の発症における新規酸化LDL受容体FEEL-1,2の寄与を示唆するものと考えられる。
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