研究概要 |
[研究の目的] 本研究の最終目標は,ヒトタンパク質中のペプチドにスポットを当て,高血圧症の予防もしくは治療に利用できるツールを創製することである。ヒトタンパク質のアミノ酸配列中には,多くの未知活性ペプチドが含まれている。これらは遊離されて初めて活性を示す潜在性の活性ペプチド群としてその解明と応用が期待されている。本研究では,これらの未知活性ペプチドに着目し新規なアンジオテンシンI変換酵素阻害ペプチド(ACE)を発見し,そのレトロインバルソ型の阻害ペプチドアナログを創製することで新たな医薬品素材を提供する。 [研究の成果] 1.新規ACE阻害ペプチドの分離精製,機能解析 (1)ヒトγグロブリンタンパク質のパパイン分解物中から新規なACE阻害ペプチドを分離精製し,VAW(IC_<50>=4.3μM)及びVSW(IC_<50>=13μM)を発見した。いずれも阻害の機構は競合阻害を示した。 (2)ACEの主作用であるアンジオテンシンI基質のアンジオテンシンIIへの変換活性と,副作用であるブラジキニン基質の分解活性とを,逆相HPLCを用いて個別に測定する方法を開発した。AW及びVAWのみに,アンジオテンシンI変換活性のみを強く阻害する選択的阻害が見られ,既存の医薬品の欠点を補うことのできる新規医薬品の開発が期待できることがわかった。 (3)構成アミノ酸全てがD型でかつ逆向きの配列を有する3種のレトロインバルソ型ペプチドアナログ(_dW_dA_dV,_dW_dS_dV,_dY_dI_dL)を合成し,ACE阻害活性を測定した。 2.ヒトタンパク質中にはさらなる未知の潜在性ペプチドが存在することを実証 ヒト血漿のサーモライシン分解物中から4種(Cabin-1,2,3,4),ヒト血清アルブミンのトリプシン分解物中からは2種(Cabin-A1,A2)のカテプシンB阻害ペプチドを分離精製した。
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