研究概要 |
一塩基置換に起因する全ての一アミノ酸置換を伴うp53変異体(計2,314種類)を含有する出芽酵母ライブラリー(接合型a)と、WAD1,MDM2,BAX,14-3-3s, p53AIPl, GADD45,NOXAおよびp53R2の8種類のプロモーターを有するGFPあるいはDsRedレポータープラスミドを含有する出芽酵母(接合型α)を接合させ、蛍光強度を定量することで各変異体の転写活性化能を測定した。 その結果(1)8種類全てに対して転写活性能を有する(野生型と同等のスペクトラムを持つ)変異体、(2)全てに対して転写活性能を喪失する変異体、(3)各種プロモーターに対する転写活性能が一様ではない変異体に分類された。 世界最大のp53変異体のデータベ-スであるIAR(release 7)と比較した結果、(1)に分類される野生型と同等のスペクトラムの変異体1,278種類のうち、373種類は臨床腫瘍検体に同一のミスセンス変異体の報告が見られた。しかし、その頻度は1〜17回と決して高いものではなく、偶発的なミスセンスあるいは今回調べたプロモーターではない下流遺伝子に対する転写活性能の喪失が腫瘍形成に重要な働きを持つ可能性が示唆された。一方(2)に分類される変異体400種類のうち39種類は未報告であり、遺伝子座の変異原物質に対する感受性の差異を示している可能性が考えられた。また、プロモーター指向性について一部の変異体についてSaOS2培養細胞に導入してルシフェラーゼ活性を行ったところ、各変異体の持つプロモーター指向性は出芽酵母と必ずしも一致はしなかったが、少なからず観察され、高次構造の変化が直接あるいは間接的にプロモーター指向性を変化させることを強く示唆した。
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