研究概要 |
造血幹細胞の増殖と分化は、幹細胞のNotch蛋白とストローマのNotchリガンドとの作用によって制御される。急性骨髄性白血病は造血幹細胞の増殖と分化の異常に起因する疾患であるため、白血病細胞の異常増殖にNotch蛋白が関与する可能性を考えた。まず、急性骨髄性白血病由来の細胞株の大半と急性骨髄性白血病の患者細胞の約半数でNotch蛋白が発現することを示した。白血病細胞自体がNotchリガンドであるJagged-1蛋白を発現するものも認めた。細胞株の中には、活性化によって生じるNotch蛋白の細胞内領域断片を恒常的に認めるものや、構造異常と考えられる、分子量の異なるNotch蛋白を発現するものを認めた(Tohda et al.,Leukemia & Lymphoma42:467,2001)。 次に、ある患者の白血病細胞から、Notchリガンドによって明瞭な細胞増殖の促進を認める、初の白血病細胞株TMD7を樹立した(Tohda et al. British Journal of Haematology117:373,2002)。さらに、このTMD7細胞株を用いてNotchリガンド蛋白の白血病細胞の増殖・分化に対する作用を調べた。Notchリガンドが白血病細胞に作用を及ぼすには、培養プレート上にコーティングされていることが必要で、液体培養系にこのリガンドを直接添加しても有意な作用は認めなかった。TMD7はNotchリガンドをコーティングしたプレートで培養すると、形態変化を伴いながら短期的な増殖が有意に亢進したが、長期的な増殖や自己再生能は抑制された(Tohda et al. International Journal of Oncology : in press)。現在は、患者白血病細胞に対するNotchリガンドの作用を調べ、患者予後との関連性を検討中である。
|