研究概要 |
乳酸脱水素酵素(LDH,E.C.1.1.1.27)と結合する免疫グロブリン(M-蛋白例)について,その構造と結合メカニズムを探るため種々の実験を行い,以下の点を明らかにした。 1.精製LDHとの再結合実験を行ったところ,患者精製BJPはmonomer,dimerともLDH3,4,5に対し明らかに強い親和性を示したが,患者精製IgG型M-蛋白では明確な再結合が証明されなかった。 2.患者BJPを用いてWestern blotting分析を行ったところ,2-mercaptoethanol(2-ME)存在下では,分子量約28,000のバンドが1本のみであったが,2-ME非存在下では,分子量約44,000〜60,000までの間に明瞭なバンドが3本出現し構造異常の存在が強く示唆された。 3.患者BJP結合affinityカラムを作製し,LDHとの親和性を確認したところ,NADH添加前では,LDHとの親和性が観察されたが,精製LDHにNADHを加えたものでは,いずれのアイソザイムもBJPに再結合できなくなることが確認され,BJPとの結合にLDH分子のNAD^+結合領域が深く関与していることが示唆された。 4 患者精製BJPのアミノ酸配列をProtein Sequencerにて分析したところ,N-末端側からのアミノ酸残基はSer-Tyr-Glu-Leu-という配列であり,既報(Clin Chim Acta 264:163,1997)のLDH結合性を示すBJP例と同様,N-末端側の2番目にはLDH分子のNAD^+結合領域に存在するアミノ酸残基と結合しやすい芳香族アミノ酸の一種のTyrが位置していることが確認された。 これらの結果から,BJPのLDHとの結合は抗原抗体反応による結合とは考え難く,BJPの構造異常に起因し,その結合部位はLDH分子のNAD^+結合領域である可能性が高い。
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