研究概要 |
本年度は健常者におけるリラクゼーション効果の評価への応用を中心に行った.また,健常成人ならびに高血圧患者について精神症状をself-rating questionnaire for depression (SRQ-D,筒井ら,1981年)を用いて評価し,気分(精神状態)と神経伝達物質の関連についても評価した.測定した神経伝達物質はセロトニンおよびその代謝産物である5-hydroxyindole acetic acid (5-HIAA)ならびにセロトニンの前駆体のアミノ酸であるトリプトファン,ドパミンの代謝産物であるHVA (homovanillic acid)について検討した. 1)リラクゼーションと唾液中神経伝達物質の関連 唾液の採取には唾液採取管(Salibette, Sarstedt社製)を用い,神経伝達物質の測定には高速液体クロマトグラフィーを用いた. 健常成人40例について温泉入浴前後で唾液の採取とセロトニンならびに5-HIAAの測定を行い,温泉入浴前に比して入浴後は唾液中のセロトニンならびに5-HIAAが有意に上昇しており,リラクゼーション効果の指標となりえることが明らかとなった. 2)高血圧患者の精神症状と神経伝達物質 ストレスと関連の深い高血圧患者では健常者に比較して,SRQ-Dスコアが有意に高値であり,潜在的不安・うつ症状を有すると考えられた.健常者に比して高血圧患者ではドパミンの代謝産物であるHVAと5-HIAAが有意に高値であり,ドパミン神経系の賦活状態を示しているものと考えられた.これらの所見は高血圧患者に認められる精神症状を神経生化学的に証明したものと考えられた.
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