研究概要 |
本研究は65歳以上の大腿骨頸部骨折を起こした高齢者を対象に,骨折予防のための構成要素を明らかにし,これらから骨折予防のためのQOL指標を開発・評価することを目的とする。対象は療養型病床を有する病院において手術を受けて退院した高齢の大腿骨頸部骨折患者102名である。このうち,死亡、痴呆等による認知障害,調査拒否,転居、所在不明を除外した38名を分析対象とした。対象者には質問紙郵送法により通知し,回答を求めた。対象者には書面により本調査の目的,効果等詳細な説明を行い,承諾書を得た。調査内容は,基本属性,健康状態(主観的健康感,転倒の有無と転倒回数,転倒場所,転倒原因,現在のADLおよびIADL等),主観的幸福感(PGCスケール),自己効力感,社会参加,趣味の有無,介護サービスの有無等を聞き取った。平均年齢は82.5±7.1歳,退院後年数は,1年未満6.7%,1〜3年93.3%であった。主観的健康感を良好群と不良群の2群に分類し各スコアを比較したその結果,主観的健康感良好群は不良群に比較して,IADLスコア,PGCスコア,自己効力感スコアはいずれも有意に高かった(p<0.05)。さらに自己効力感を良好群と不良群の2群に分類し各スコアを比較した結果,自己効力感良好群は不良群に比較して,IADLスコア、PGCスコアは有意に高かった(p<0.05)。さらに,骨折患者の自己効力感に対する日常生活因子,健康感、幸福感の複合影響を検討した。その結果,主観的健康感、IADLスコアは自己効力感を有意に上昇させる方向に働いていることが示された。以上のことから,高齢の大腿骨頸部骨折患者のQOL指標として,ADL,IADL,自己効力感,主観的健康感,主観的満足感,社会参加等の内容を検討する必要性が示唆された。
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