研究概要 |
〔目的〕里帰り出産の実態を把握し,里帰り出産と夫婦の里方との関係が生殖家族としての新しい家族形成におよぼす影響について検討し,親への移行を円滑にするための里帰り出産の今日的意味づけを考察する。対象者は地域的特性の相違を比較するため,北海道内居住者137名,愛知県内居住者184名の1歳児をもつ母親に対して調査を実施。 〔結果〕 1.里帰り出産における地域的な特性 1)愛知県及び北海道居住者の共通点: (1)里帰り出産の頻度は,愛知県内居住者では90.6%と対象者の多数を占めている。北海道内居住者の72.4%に比べると有意に高い傾向がみられる。 (2)里帰り先は愛知,北海道地域とも,90%以上は妻方生家への里帰りであり,里帰りをする理由として,「休養がとれる」「精神的に安心」といった心身両面の理由が主である。 (3)里帰りすることの評価は,両地域とも85%以上は賛成の評価をしている。 2)愛知県及び北海道居住者の相違点: (1)愛知県内居住者については里帰り慣行との関係がみられる。 (2)里帰り時期は,妊娠中・産褥期に約半数に二分されるが,愛知県居住者の方が妊娠期から産裾期にかけて長期に里帰りをしている。 2.親になる過程(育児の社会化)における里帰り出産の意義 (1)社会化の担い事として,実親、生家との関係がみられる。 [結論]現在,里帰り出産を選択する夫婦の特徴は「夫の生家より妻の生家の方結びつき(絆)が高い子育て家族といえる。出産の一時期,親との親密な関係のなかで,親としての社会化を形成していく一段階ともいえよう。
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