研究概要 |
本研究の目的は,青年期の性意識・性行動の実態と,それらを規定している要因,および性非行や望まない妊娠を招くような危険要因を解明することである。 本研究は,データの集積方法として量的,質的データの解析という2つの行程を経た。量的データの集積については,全国レベルでの大学生を対象とした青年期の性に関する無記名自記式質問紙調査を実施した。これにより4,225(男性31.5%,女性68.5%)の有効回答(平均年齢は20.3歳)を得た。性行動の実態は,男女とも約60%が性交経験を有し,初交年齢は男性17.7歳,女性18.2歳で男性の方が早かった。性交経験者のうち,現在複数の性的パートナーがいる者が4.1%あり,リスクの高い集団と考えられた。また男性より女性の方が高い頻度で避妊を実行していると答えたが,妊娠既往のある女性4.7%のうち92.3%は人工妊娠中絶に至っていた。また性行動を規定する要因としてパーソナリティと被養育体験との関連を調べた。性行動を従属変数とし,Temperament and Character Inventory (TCI)とParental Bonding Instrument (PBI)を説明変数とする重回帰分析の結果,PBIよりもTCIの方が性行動を規定していることがわかった。すなわち性行動には被養育体験よりも気質が関与する可能性が高いという新たな知見を得た。 次にインターネットによる性に関する意識調査を実施し,その中から10代の415名の分析を行った(男性48.7%,女性51.3%)。これによれば,性交経験率は32.7%で,初交年齢は男性14.3歳,女性14.7歳であった。また性に関する逸脱行為を経験するなどリスクの高い集団は6.0%であった。その影響要因としては,養育環境よりマスメディアや身近で同世代の対人関係によるものの方が大きいことが示唆された。 さらに,性の社会的逸脱行為経験者やセックスワーカーへの面接による質的データの解析より,彼女らの性に関する規定要因として個別的要素の関与が濃厚であり,異性との関係や養育者の関心などが,複合的に絡んでいることが考えられた。
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