研究概要 |
1.神奈川県内の高齢者関連施設での疥癬感染実態が把握された。 1995-1999年の5年間の高齢者関連施設の73.3%にあたる77施設で計227件(1施設あたり2.95件)の疥癬感染が起きていた。り患者の約90%は長期入所者で,発生の85%が特養ホームと特定許可病院で発生し,療養型病床群では発生が少なかったが,り患者数は老健施設の5.7人にくらべ4.7倍高かった。調査した5年間で,発生施設数,発生件数,1発生あたりのり患者数は減少傾向にあった。神奈川県の高齢者関連施設での疥癬の流行の多くが単独発生化・頻発化していたが,療養型病床群では大型化していた。 2.高齢者関連施設への疥癬ダニの侵入経路,施設内伝播および疥癬発生時の対応が解析された。 施設内流行の原因は,85%が施設間のピンポン感染であり,残りは施設を短期利用した高齢者だった。施設内伝播はADL5の寝たきり高齢者が多く感染したことから,介助員の手指あるいは衣服を介した接触伝播で広がっていると推定された。疥癬が発生した施設の半数では,発疹の発見ならびに診断の遅れが原因で,流行が拡大していた。 3.高齢者関連施設に対して流行防止策を提示し,発生があった施設での直接指導をおこなった。 2の解析により,疥癬の流行防止策(発疹の早期発見,著効薬であるγBHCによる早期治療,標準防止策の徹底)を提示した。さらに,施設員(看護師,ヘルパー)に対し,講習会を通じて啓蒙活動をおこなった。 4.在宅要介護者および在宅療養者の疥癬実態を調べた。 訪問看護する訪問看護ステーションを通じ在宅者の疥癬感染実態を調べた。施設の25.3%で49件の発生(1施設あたり1.4人)があり,疥癬発症率は65才以上の高齢者率が高い地域ほど高い傾向があった。感染者の60%が76-85才,ADL4-5,痴呆の高齢者だった。感染者の17%が訪問施設員,家族,他業種の訪問員に感染させていた。感染原因の40%は,ショーショートスティで短期に利用した高齢者関連施設だった。在宅者が疥癬に感染すると,87.5%が利用している訪問サービスが中断されていた(1在宅者あたり平均2業種)。今後,在宅者の疥癬の早期発見ならびにγBHCによる早期治療をはかるとともに,各種訪問サービス業種員に対する疥癬対応・感染予防教育をすすめる必要性があるとおもわれた。
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