研究概要 |
軽症高血圧者を対象に,水泳の血圧および血管内皮機能に及ぼす影響を検討した。 初回水泳教室参加者28名にあらかじめ運動負荷試験を含むメディカル・チェックを行った後,肝機能障害および運動負荷試験陽性の2名を除去し,3ヶ月間運動を継続した軽症高血圧者7例,正常血圧者9例を対象とした.対象者の平均年齢は49.4±7.5歳であった.対象者に最大酸素摂取量の50%程度の水泳1回60分間を週2〜3回,3ヶ月間行った.水泳開始前と3ヶ月後で,対象者の血圧,血管内皮機能,血清脂質,等の変化を比較した.血管内皮機能は,血管内皮弛緩因子由来の血管拡張反応(flow-mediated dilatation ; %FMD)と血管内皮非依存性の血管拡張反応(nitroglycerin-induced dilatation ; %NTG-D)をみた. 結果,血圧は軽症高血圧者および正常血圧者共に拡張期血圧が有意に低下した.(軽症高血圧者:88.4±11.1mmHg vs 78.7±5.9mmHg,正常血圧者:67.9±9.5mmHg vs 61.6±9.1mmHg, p<0.05).さらに,血管内皮機能も,両群共に血管内皮由来の血管拡張反応(%FMD)が有意に上昇した(軽症高血圧者:12.0±4.2% vs 17.7±4.3%,正常血圧者:12.9±5.7% vs 19.4±8.9%,p<0.05).また,BMIは有意な変化はなく、軽症高血圧者の総コレステロールは有意に低下し(238.0±24.7mg/dl vs 217.9±28.2mg/dl, p<-0.05),正常血圧者のHDLコレステロールは有意に増加した(63.2±12.6mg/dl vs 71.4±12.9mg/dl, p<0.01).水泳は有効な降圧をもたらすのみでなく,高血圧および健康な中高年者の血管内皮機能を改善した.
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