研究概要 |
定期的(4日/週)に運動(水泳バレーボール、サッカーなど)を行っている男子大学生6名を対象に水中でのランニングと陸上でのトレッドミルランニング運動を負荷漸増法により疲労困憊まで運動させ、実験を行った。水中運動は浮きベストを装着し、水深160cmのプールにて行った。水中走行運動のスピードは144ステップ/分から開始し、1分間に8ステップ/分づつテンポを増大させ疲労困憊まで運動を行わせた。水中走行運動のテンポはメトロノームに合わせ、そのスピードから遅れた時点で運動を終了させた。トレッドミル走行運動は120m/分のスピードから開始し、1分毎に10m/分づつスピードを増大させ、疲労困憊まで運動を行わせた。トレッドミルの傾斜は10%に設定した。両運動において、10〜11分で疲労困憊に至るように運動強度を設定した。全被験者は、仰臥姿勢にて運動前15分間安静を維持したの後、運動前の安静時の血液を採取した。採血は運動終了後1.0,2.5,5.0,7.5,10分に正中皮下静脈から行った。採取した血液(それぞれ7ml)は、5分以内に乳酸とアンモニア濃度を測定した。残りの血液は遠心分離し、血漿を得、測定まで-80℃で凍結保存した。血漿中の測定項目は線溶の指標であるu-PA (urokinase-type plasminogen activator), t-PA (tissue-type plasminogen activator)、凝固のマーカーであるTPA-1 (total plasminogen activator type 1 (PAI-1)、酸化ストレスのマーカーとして過酸化水素、抗酸化物質である還元型グルタチオンを測定した。さらにt-PAをコントロールしているエピネフリンも測定した。運動強度の指標であり最大運動の指標でもある心拍数は運動前、運中、運動後10分まで連続的に測定した。水中運動中の心拍数、血中乳酸、アンモニア濃度はいずれもトレッドミル運動に比較し有意に低く、運動強度としては水中運動の方が低いことが明らかとなった。水中運動でのt-PAとu-PAは、いずれもトレッドミル運動に比べ有意に低かったが、PAI-1は水中運動とトレッドミル運動間に有意な差は認められなかった。さらに過酸化脂質濃度と還元型グルタチオン濃度にも両運動間に有意な差は認められなかった。これらのことからトレッドミル運動は水中運動に比べ、酸化ストレスと血液凝固機能は変わらないが、線溶は亢進することが明らかとなった。トレッドミル運動においてt-PA濃度は水中運動に比べ有意に増大し、同時に血漿エピネフリン濃度も有意に高い値を示したことから、トレッドミル運動においてt-PA濃度が有意に高い値を示したのは、運動強度が高いことと、さらにエピネフリン濃度が高いことによるものと推察される。
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