研究概要 |
本研究は,活動筋の血流を阻止あるいは血管を膨張させた時の換気応答を観察することによって,筋内の機械・代謝受容器からの情報が運動時の換気高進に及ぼす影響を検討することを目的としている.初年度の研究では,筋の機械・代謝受容器を刺激した際の換気量の応答に一定の傾向が見られない理由として,筋からの情報が増加しているものの,頚動脈や延髄の化学受容器からの情報が減少したためと考えられた.そこで次年度には,吸入するCO_2濃度をコントロールして,頚動脈や延髄の化学受容器からの情報を一定にした上で,筋内の受容器を刺激し,その際の換気量の変化を観察した. 被験者に最大負荷の30%に相当する強度での脚伸展運動を2分間行わせた.対照試行では通常の回復をとらせた.実験試行では運動終了直前から3分間に渡って220mmHgで大腿部を加圧した.こうして代謝産物の蓄積した状態を保持することで筋内の代謝受容器を刺激できることは昨年度に確認している.これらの回復期に0%,3.5%あるいは5%のCO_2濃度の空気を吸入させた.動脈CO_2濃度の指標となる呼気終末二酸化炭素濃度(P_<ET>CO_2)と換気量との関係を試行毎に算出したところ,_<ET>CO_2が38〜42mmHgの範囲において対照試行よりも実験試行の換気量が高いことが示された.この結果は筋内の代謝受容器からの情報が換気を高進していることを示唆するものであった.一方,機械受容器からの情報の役割については,運動後回復期における姿勢変化を用いることによって血管の膨張の程度を変えて,機械受容器刺激の影響を検討した.しかし,機械受容器刺激が換気高進を起こすという明らかな結果は得られず,今後の検討課題として残された.
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