研究概要 |
本研究は、精密把握運動制御に関わる脳領域を運動手の左右差および運動準備期と運動実行期の差異の観点から解明することを目的とした。実験参加に同意の得られた計18名の右利きの被験者について、小物体の摘み持ち上げ運動中の脳活動をH_2^<15>Oポジトロン脳局所血流測定装置(PET)を使用して2実験で調べた。実験1では把握運動での脳活動領域を把握物体の重量(4,200,600g)との関連で調べた.実験2では運動準備および実行に関わる脳領域を運動肢の左右差の観点から調べた.実験2での条件としては,右手での運動準備から実行,右手での準備のみ,左手での準備から実行,左手での準備のみ,安静であった.PET測定と同時に運動中の手および腕の筋活動、把握物体への力作用なども測定した。その結果、精密把握運動には運動肢と対側の主運動野,主感覚野,運動前野,補足運動野,帯状回運動野,視床,大脳基底核および同側の主運動野,頭頂皮質(BA40),さらには両側の小脳が関わることが明らかとなった.物体重量の影響は主運動野と主感覚野で顕著に認められた.これらの脳領域に運動肢の左右差が関わる影響としては,右手での運動において右の小脳半球部の活動に顕著な賦活が認められたこと,左手では運動野周辺の賦活のピークがより高くなることなどであった.運動準備中には運動肢の左右差に関わらず左の補足運動野での賦活が認められた.また,準備中に対側の主運動野での活動も認められた.一方,運動実行期には運動肢と対側の運動関連領域(主運動野,運動前野、主感覚野)および向側の小脳での活動が認められた.これらの結果は,精密把握運動制御に関わる脳各部位の経時的な関わりおよびその左右差について重要な情報を提供している.
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