研究概要 |
運動トレーニングは多くの生体機能を改善することが知られている.本研究はその中でも生体機能の恒常性維持に重要な体温調節機能が運動トレーニングによりどのように改善されるのかを皮膚交感神経活動(SSNA)より検討するために次の課題を設定した.a)皮膚交感神経活動と熱放散反応(発汗反応と皮膚血流反応)との関係を明らかにする(平成13年度:実験I).b)a)で得られた関係が運動トレーニングによりどのように変化するのかを検討する(平成14年度:実験II).運動トレーニングとしては常温下での連続10日間の持久的運動(60%VO_<2max>,30分×3回)とし,運動トレーニング前後で循環スーツを用いた温熱負荷を食道温(Tes)が約1℃上昇するまで継続した.SSNAは腓骨神経より,発汗量(SR)や皮膚血管コンダクタンス(CVC)はその神経が支配している部位(足甲部)で測定した.得られた結果は以下のとおりである. 1)TesとSSNAの間にもSRやCVCと同様に正の相関関係が得られた. 2)SSNAとSRおよびCVCの間にも正の相関関係が得られ,Tesが安静時より大きく上昇するような場合にはSSNA-SR関係の相関係数がSSNA-CVC関係のそれより有意に大きかった. 3)運動トレーニングによりVO_<2max>が5%増加し,安静時のHRとTesが低下した. 4)運動トレーニングによりTes-SR, Tes-CVCおよびTes-SSNA関係はいずれの回帰直線も左方へ移動した. 5)運動トレーニングによりSSNA-SRおよびSSNA-CVC関係における回帰直線がいくらか左方に移動し,同一SSNAでSRやCVCが多くなった. これらのことから,常温下での運動トレーニングは熱放散反応が引き起こされる深部体温闘値を低下させ,また,同一の皮膚交感神経活動でも発汗量や皮膚血管拡張がより多くなることが推察された.
|