研究概要 |
一過性の運動により生態防御系は変動をきたすが、継続的な運動習慣により安静時の生体の防御機構が高進するか否かは興味のあるところである。マウスを対象にして遊泳運動を負荷した際の感染に対する抵抗力はトレーニング群の生存率が対照群のそれを上回った。本研究は(1)リンパ球細胞数の変化、(2)顆粒球細胞の貪食率と過酸化水素産生能、そして(3)サイトカインに注目し、トレーニングに伴う生態防御系の動態を調べることを目的とした。方法:被検動物はマウスddY5〜7週齢のオスを用いた。トレーニングは遊泳とし、1時間/回、4-5回/週とし、トレーニング期間は0.5ヶ月、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月とした。水温は36〜37℃であった。マウスは、トレーニング群のほかに対照群と温水浸漬群を設定した。その結果、遊泳トレーニングにより脾臓重量は増大した。血中のリンパ球サブセット(CD3,CD4,CD8,CD19)に対する長期間トレーニングの影響は統計的に有意な変動は見られなかった。蛍光ビーズの貪食はトレーニング群で高まる傾向にあったが、定量的には有意な変化は見られなかった。過酸化水素産生能にも変化がなかった。血中のGM-CSFは不変であった。脾臓組織のIL-6の変化も明確な違いは見られなかった。今回のトレーニングで統計的に有意に変化したのは脾臓重量だけであった。一方で、生体防御機構の機能的な側面は不変であったことから、脾臓重量の増大が生体防御に有意味な変動なのかは不明である。
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