研究概要 |
最近,Levine&Gundersenが,高地滞在低地トレーニングという新しいトレーニング方法を開発し,持久的運動成績が従来の高地トレーニングに比較して,顕著な効果をあげた.しかし,その効果には個人差があり末解明な部分が多い.この個人差は低酸素性肺血管収縮が関与すると推測している、この解明により,高地滞在低地トレーニングの方法は,新高地トレーニングとして確立されるはずである.研究の目的は,新高地トレーニングの効果の検証とその効果のメカニズム,とくにラットを用い,肺循環機能の変化を内皮細胞由来の弛緩・収縮物質の検討を中心に基礎的研究を行った.高地トレーニングは,平地トレーニングと違い低圧低酸素環境で運動を繰り返す.とくに,低酸素吸入は,肺血管が収縮する,いわゆる低酸素性肺血管収縮(HPV)が生じ肺循環抵抗は増大し,運動時には肺拡散能力を制限し運動能力を低下させる可能性がある.一方,HPVは,運動時の肺血流量の増加により肺血管内皮に対してshear stress(ずり応力)を増大させるため,一酸化窒素(nitric oxid,No)の放出は促進する.低酸素トレーニングはこのHPVと血流量の増加によってShear stressが繰り返されNOの放出も繰り返される.そのようなことから高地トレーニングの効果を検討する上で,肺循環系がキーポイントにあると考える.本研究では,ラットの肺血管に注目し低酸素トレーニング後,とくにトレーニング効果がみられたラットについて,低酸素の吸入に対して肺血管はどのような変化がみられるかNO合成酵素阻害剤を用いて検討した.OBLAは,低酸素トレーニングを行った23匹中12匹において向上し,持久的能力の改善が認められたが(Effect群),11匹はControl群と差がなかった(No-Effect群).運動による肺動脈圧の上昇は,Effect群が他群より少なかった.また,安静時の肺動脈圧はNo-Effect群で高い傾向を示した.HPVはEffect群が他群より有意に低くL-NMMA投与により3群ともHPVは増大するが,Effect群の増人は有意に大きかった.低酸素トレーニンブ後、No-effect群の右心室重量は他群に比較して有意に増大しており右心室肥大がみられた.
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