研究概要 |
1.上気道感染症罹患状況と唾液中の分泌型免疫グロブリンA(sIgA)の変動 継続的に唾液sIgA濃度と上気道感染症罹患状況を調査した.唾液sIgA平均濃度と上気道感染症罹患日数とには相関はみられなかったが,唾液sIgAは個人差が大きいため,個人のsIgAの変動が上気道感染症罹患に関係する可能性を考慮する必要がある.上気道感染症に罹患したときに,唾液sIgAの低下が観察された者がいた. 2.高強度運動による唾液の可溶性Intercellular adhesion molecule 1(sICAM-1)の変動 マラソン前後の唾液sICAM-1を測定した.唾液sICAM-1は上気道感染症の原因のrhinovirusの感染防御に働くと考えられる.唾液sICAM-1は一過性高強度運動後に上昇し,その上昇は総蛋白濃度の上昇と同様であったため,運動後の上気道感染症罹患増加には関与していないと考えられる. 3.定量運動負荷による上気道感染症防御因子の変動 自転車エルゴメーターで定量的運動負荷を行い前後の唾液sIgAを測定した.80%強度の運動後に唾液sIgAの低下が観察され,高強度運動では短時間の運動でも唾液sIgAが低下することがわかった. 4.運動によるsIgA分泌抑制メカニズムの解析 ラットで疲労困憊の運動後にsIgAの低下がおこるが,polymeric immunoglobulin receptor(pIgR)の発現量に変化はみいだせなかった.pIgRの発現調節以外の機構でsIgAの低下がおこっている可能性があるが,さらに検討を要する.
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