研究概要 |
1.非対称な持ち上げにおいて、peak force, peak, peak velocity, average upward acceleration, HRが対称の挙上よりも低く、さらに挙上高が高くなるにつれてこれらの力学的測定値が低下した。挙上高104.1cmで取扱重量15kgの持ち上げでは、動的挙上が不能となり、物体を静的に維持するため筋骨格系の負担が高くなることが示唆された。RPEに関し、作業者に対する箱の位置の要因は対称に比べ非対称で、高さの要因は、挙上高が高い作業ほど、取扱重量要因は10kgに比べ15kgの作業で相対的に高いRPEを示し、持ち上げ作業時にこれらの労働上の要因の制限が重視されるべきであると考えられた。 2.低床ベッドの利用や介護ベルトの使用における起立介助模擬作業実験の結果,平均持ち上げ速度に対する持ち上げ重量を比較することによって作業条件の違いによる持ち上げ能力の評価が可能なことが示された.また,作業限界あるいはこれに近い高負荷領域での評価を行わなくても,これを低減した負荷領域での持ち上げ速度に対する持ち上げ重量を評価すれば十分妥当な結果が得られることが示された. 3.間欠性作業を想定した有酵素パワーと無酸素パワーの関連とその男女差について検討した。その結果、有酸素パワーが無酸素パワーの維持には強く関係していること、および、女性では連続作業を継続するをとが不可能である場合があり、女性の作業強度基準の設定が必要なことが示唆された。 4.患者を移乗する際、持ち上げるのに比べ補助板上を滑らせる方法が有効であった。さらにムービを併用することによって、より介護者側の身体負担も少なくなっていた。患者役の安心感も低い順位であることから、作業に合わせた介助補助用具の選択と患者側への確認や配慮が必要であることが示された。
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