研究概要 |
高齢者の健康体力指標の検討を進めるため,文部科学省による新体力テスト(特に65歳以上の高齢者向けテスト)や米国AAHPERD(全米保健体育レクリエーション学会)高齢者部会による高齢者体力テスト等を参考に,高齢者を対象とした体力テストバッテリーを考案,実際に活動的な高齢者を中心に体力測定を実施した結果,ウオーカー群被検者の体力が当該年齢層の平均値を遥かに上回ることが証明された.次に高齢者の包括的な健康体力度評価を目的に,ライフスタイル,危険因子保有状況,QOL, ADL等の該当状況を把握できる質問紙を考案,該当の被験者群及び大学生,市民一般,健康指導者,高齢ウオーカー,デイサービス利用の後期高齢者の各群を対象に調査を実施した.その結果,加齢に伴ってADLが下降するのに対し,習慣的に一定量のウオーキングを継続実施している高齢者ウオーカー群では加齢による体力下降がある程度逆転するほどにADLが保持され,デイサービス利用の後期高齢者であっても社会的活動が行われている限り,生甲斐や社会性などで見るべきQOLが保たれていることなどが判明した.以上から体力テストバッテリー及び質問紙調査票の有用性が示唆された.生甲斐を持ち社会的活動に参加する高齢者は,QOLが高レベルで保持され,ウオーカーが継続的に実施するウオーキングなどにより体力レベルが向上する例もあることが示唆された. 一方,高齢者の「寝たきり予防教室」を開設し,基本的な転倒予防体力を向上させるための運動プログラム開発を目指した.その結果,参加者の身体機能や体力レベルに応じて処方した週2回,8週間の運動トレーニングにより,男性では上体起こし,6分間歩行において,女性では,握力,上体起こし,10m障害物歩行,6分間歩行において有意な改善がみられた.従って,低強度,短期間の運動トレーニングでも,高齢者の体力改善に有効である可能性が示唆された.
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