研究概要 |
この研究は,従来の地質学的手法のほかに,テフラ編年学的および地形学的手法を十分に加えて,九州のいくつかの火山の噴火史を高精度かつ総合的に復元しようとしたものである. 今回,高精度噴火史が明らかにされた火山は,鹿児島県の姶良火山,五島列島の鬼岳火山,壱岐島の岳ノ辻火山である.熊本県の阿蘇火山と大分県の九重火山は研究半ばではあるが,途中経過の概略を報告する. 姶良火山は10万年前から入戸火砕流の姶良噴火に至る2.5万年前までの間,おおむね7500年に1回程度の間隔で,時折安山岩質溶岩や降下スコリアを出しながらも間欠的にデイサイト質マグマによるプリニー式噴火を繰り返している.鬼岳火山は玄武岩質の溶岩流と降下スコリアからなる11の単成火山からなり,その活動時期は50万〜1.8万年前,平均的な噴火周期は5万-3万年である.岳ノ辻火山は約80万年に活動した壱岐火山群では最新の単成火山で玄武岩質溶岩と同質の降下スコリア,火砕サージなどからなる小型ながら複雑な成層火山であることが判明した.また,予察的ではあるが,阿蘇火山は,阿蘇4火砕流噴火以後8万年から現在に至るまで,多様な噴火を行っていることがわかりつつある.すなわち最初期のプリニー式およびサブプリニー式噴火を繰り返し降下スコリア・軽石を間欠的に降らせた第1期,マグマ水蒸気噴火による降下火山灰や火砕サージを形成する第2期,中期の降下軽石から降下スコリア,降下火山灰へと変化するサイクルを4回繰り返す第3期,2万〜1万年前の降下スコリアを形成する第4期,1万年前以降の降下火山灰形成を主体とする第5期である.阿蘇火山は他の火山に較べ噴火頻度が高いのも特徴である.今後の詳細調査により大いに成果が期待される火山である,九重火山の5万年前以降の火山活動については,従来の報告より数多くの小規模噴火イベントや九重第1降下軽石などの大規模テフラの分布範囲の詳細が明らかになり,噴火頻度や噴出量についての算出が訂正されつつある.
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