研究概要 |
本研究の目的は,従来あまり注目されてこなかった東北日本の大規模火砕流堆積物に起源を持つ広域テフラを見出し,高精度第四紀編年に役立たせるものである.具体的な調査研究は,給源地域と遠隔地の模式テフラ試料を収集し,それらの岩石記載的特性を明らかにしてゆくことである.研究成果の概要は以下のとおりである. (1)八甲田地域において既知である八甲田第1期火砕流堆積物と同第2期火砕流堆積物以外に少なくとも2枚の火砕流堆積物を見出した.これらの層序を確立し記載岩石学的特性を明らかにした.また,古地磁気調査を行ない,八甲田第2期火砕流堆積物が正帯磁,同第0期火砕流堆積物と黄瀬川火砕流堆積物が逆帯磁であることを明らかにした.この結果は同第1期火砕流堆積物に伴う広域テフラの認定を支持する. (2)本研究を進めていく上で有効な九州起源の広域テフラが新たに東北日本で認められた.この広域テフラは誓願寺-栂テフラ(約60-70万年前)で,従来から房総半島までで知られていた.火山ガラスの微量成分分析を行なった結果,同広域テフラが九州から房総半島をへて,男鹿半島まで分布することが確かめられた. (3)房総地域に分布する細粒火山灰と東北日本各地の火砕流堆積物の化学組成データを整理し,類似する組み合わせがないかを検討した.その結果,北海道の火砕流堆積物に対比可能な火山灰は検出されなかった.八甲田地域の黄瀬川火砕流堆積物と白河地域の芦野火砕流堆積物は房総半島のU8テフラと類似することがわかった.これらの組み合わせではいずれも2つ程度の成分の重量比が若干異なり,どちらの対比が成り立つか,あるいはいずれも成立しないのか,現段階では判断できなかった.今後の検討課題である.
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