研究概要 |
平成13年度は,(1)熱コンダクタンスは布の構成繊維直径に依存しないが,比通気抵抗は繊維が太いほど小さいことから,今回の低クリンプ,低曲率メリノ羊毛の利用用途は,これらを考慮するとさらに有効である.(2)羊毛topから紡績時の糸密度,撚りなどの制御により,同じ繊維であっても布の性質を設計的に変えられる可能性を見出した.(3)比較的太い羊毛繊維を含むリサイクルわた(布生産時に算出される端ゴミ)の熱コンダクタンス,通気特性を評価した.海外共同研究者のオーストラリアニューサウスウェールズ大学のRonald Postle教授とデータについて討議した.繊維形状や糸構造と布の構造の評価は,これまでの力学量計測による客観評価に加え,今後は表面観察画像の類型化や画像パターンの数量化による布のソフト化評価の可能性が示された.とくに従来から羊毛黒布の生産では,日本の技術は国際的に最高品質であることが認められており,最終用途の総合評価法の開発は重要である.その共通認識から(4)官能検査と表面観察映像-画像処理適用を連結した方法で布特性を記述する評価法開発の基礎を提供することができた. 平成14年度は,処理等による羊毛布の性能改善とその評価に関わる実験,解析をすすめた.羊毛布の諸処理による風合いの改良を行った.ニュージーランド国立羊毛研究所の製品加工部門主任研究員Surinder Tandon博士と北海道教育大学,森田みゆき助教授の協力を得て,同研究所から提供されたコース羊毛平編布の性能改善(とくに柔軟化)について,酵素(プロテアーゼ)処理による力学特性の変化と柔軟剤処理による同変化のを比較検討した.(1)酵素処理による手続きの方が,糸断面内の繊維間間隙が増していることが観察され,(2)引張り柔らかさや表面平滑性などで酵素処理の優位な有効性が確かめられた.(3)平織布にもおいても効果を確認できた.
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