研究概要 |
1.障害児の衣生活に関する実態調査 (1)障害の種類の違いによる問題 知的障害児は衣服の前後・表裏の区別,着替えるという意識を持たせることが困難であり,肢体不自由では全面的な介助が必要とされていることがわかった。 (2)障害児と健常児の比較 障害児では,中学・高校生になると着用する衣服を自分自身で選択する者が少し増える傾向がみられた。身体的な障害を重複していない場合には日常的に着用する衣服は健常児と同じ傾向であった。保護者が衣服を選択する際に重視していることでは障害児が機能面,健常児がファッション面と違いが認められた。また,障害児の場合衣服の着脱の練習を開始した年齢が3歳の者が多く含まれていた。 (3)知的障害児の自立支援に向けて 日常生活において「衣服の着脱」「衣服が汚れたとき,汗をかいたときに取り替えること」は,一人でできる者が多かった。一方,「目的や季節・天候にあった服装をする」など,経験の積み重ねを必要と高次の判断が求められる事柄については保護者の援助が必要とされていた。また,これらは社会に出るまでに必ず身につけてほしいという回答者も多かった。 2.身体的障害のある場合の衣服の着脱について 基本的に,着脱のしやすさは,重ね着された衣服の摩擦による影響が大きいことが推察できた。肘関節拘縮シミュレーターをつけた着脱では,特に長袖Tシャツと長袖ワイシャツの着衣において所要時間が長くなる傾向が捉えられた。半袖Tシャツについては着衣に時間はあまりかからないが脱衣に時間がかかることがわかった。またストレッチ性のある長袖Tシャツは動作が楽にできる反面,縫い目の位置等のよれが目立ち,全体の形を整えるのに時間がかかり被験者の心身の負担が大きいことがわかった。着脱動作における個人差と衣服そのものの変位のとらえ方については課題が残った。
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