研究概要 |
本研究は,高齢者などに適した機能ゲル材料からなる快適なオムツの設計指針を得ることを目的としている.平成13年度は,部分鹸化型ポリビニルアルコール(PVA)ベース膜を,グルタルアルデヒドおよび数種類の疎水性アルデヒドで不溶化し,オムツモデルとしてのゲル膜の調製を試みた.その結果,含水率と親水性-疎水性バランスの異なる数種類のゲル膜が得られた.科学研究費補助金により購入した示差走査熱量計を用いてゲル膜を測定し,膜中水の凍結融解挙動を捉えることが可能な測定条件を探索した.平成14年度は,種々のゲル膜に対して,尿のモデルである塩類の収着特性と透過特性を調べるとともに,対応した条件での示差走査熱量分析を行い,ゲル中の水の状態と塩の収着と透過との関係を検討した.疎水性アルデヒドで不溶化した膜は,グルタルアルデヒドで不溶化した膜に比べて,同じ含水率を持つ場合でも,自由水と凍結結合水の総量が2から4倍になることがわかった.また,水和エネルギーが大きいイオンを持つ塩ほど,塩の分配係数の大きさが膜に導入したアルデヒドの違いの影響を受けることがわかった.平成15年度は,完全鹸化型PVAをグルタルアルデヒドで橋かけしたゲル膜を用いて,ゲル膜の含水率が塩収着性にどのような影響を与えるかを調べた.塩の分配係数は,塩が凍結水と不凍水に対して異なる溶解性を持つとした,膜中水の「2状態モデル」で,ほぼ説明できることが明らかになった.この3年間に得られた実験結果に関して,溶液中の塩とゲル構成高分子との間の水分子を通しての相互作用の観点から総合的な考察を行った.ゲル材料の塩溶液吸水メカニズムの詳細な検討より,オムツに適したゲル材料の設計の方向が明らかになったものと考えられる.
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