研究概要 |
生活騒音が居住者に及ぼす生理的心理的影響について調査した。生活騒音は人の身近で発生し,人は常にその影響を受けている。このため,生活者の24時間の生活行動とその時の音の大きさレベルを記録し,その音に対する評価を聞く。音に対する評価は3種類(「音の大きさ」,「快適感」,「音の評価」)を5段階評価で行った。また生活者が1日に曝される騒音レベル毎の時間率に対する暴露について調査した。終日測定による最大騒音レベルは100〜110(dBA)であった。また24時間等価騒音レベルは60〜80(dBA)である。騒音暴露時間の累積度数が20%における騒音レベルが60(dBA)未満のグループと60(dBA)以上のグループに被験者を2分類することができる。主な生活行動別の騒音レベル平均は,睡眠43(dBA),食事69(dBA),炊事69(dBA),テレビ66(dBA),読書61(dBA),徒歩64(dBA)程度であった。「音の大きさ」の評価では,等価騒音レベル40(dBA)以下で「小さい」,75(dBA)以上で「大きい」の評価が多い。思考をともなう作業では,騒音レベルが比較的小さくても「快適感」評価では「やや不快」の回答がある。「音の評価」では,音のレベルにかかわらずテレビの音に対し「丁度よい」との回答が多いが,これは各自が適した音に調整しているためと考えられる。集合住宅における室内騒音の発生状況,音源種類,居住者の「気になる」音の指摘数を調査した。これら測定および聞き取り調査によると,床衝撃音や給排水音など固体伝搬音が問題とされる生活騒音源であった。住宅性能表示は,諸外国および日本で行われているがまだ普及段階である。生活スタイルの相異から測定項目に違いがある。集合住宅の床構造に対する評価において,重量床衝撃は素足で歩行する日本独自のものである。また室内の静けさの評価を室内音の絶対値で示す国がある。この考え方は居住者にとって重要な評価法であり今後日本でも採用すべきであろう。
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