研究概要 |
褥瘡(床ずれ)に影響する衣料素材の要因に関しては,皮膚と衣料素材間の摩擦・すべりが主要因と推察される。本研究では,疑似皮膚と布素材(綿・絹・毛織物,タオル布)間の圧迫・すべり摩擦特性を試作圧迫・摩擦シミュレーター装置により考察した。 1.疑似皮膚材の試作;高齢者の皮膚面の型取り肌模型をもとに,疑似皮膚材(ビューラック社製バイオスキン)上して軟・普通・硬の3種類を試作したが,それらの圧縮率は,軟12.3%,普通9.7%,硬6.2%である。 2.疑似皮膚材および衣料素材の表面特性;疑似皮膚材は軟,普通,硬になるにしたがって平均摩擦係数(MIU)と表面粗さの平均変動(SMD)は大きくなる。衣料素材では,タオル布はパイル組織に影響され,摩擦する方向によりMIUは大きく異なり,SMDは他の布試料に比較して大きい。摩擦曲線と粗さ曲線は,MP100WS(バイオパック社製)を介してフーリエ変換した。両曲線ともに低周波数域にピーク値(dB/V)が現れ,その値はSMDにより異なる傾向がみられる。 3.圧迫・摩擦シミュレーター装置による疑似皮膚材と衣料素材の圧迫・すべり摩擦特性;模擬皮膚材(厚さ0.4cm)を摩擦板に,布素材を試料台に取り付け,試料台を左右に水平移動させ摩擦力を測定した。摩擦板への負荷重100g〜1500gの範囲で変化させた。疑似皮膚と布間の摩擦係数は,負荷重の増加につれて小さくなる傾向がある。この傾向はタオル布の場合に顕著であり,羽二重やデシンの場合には少ない。全体を通して,織物よりもタオル布のほうが,疑似皮膚材の圧迫・すべり摩擦特性に影響するといえる。
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