研究概要 |
本研究は、以下のようにまとめられる。(1)九州での高齢助産師で今も現役で活躍している者は少なからずいる(2)しかし(電話帳で助産院となっていても)出産ということからは退き、後進の育成教育、妊産婦の相談を受け助言を行なうことや、市などからの要請で地域活動を行なうものの方が多い(3)どの地域においても高齢助産師と妊産婦の関係は、親子や親類のような関係で安心感で繋がっているように見受けられた(4)その安心感がリラックスした状態に繋がり、出産に繋がるようである(5)助産師は医療行為を行なわないので会陰切開などは行なわない。裂傷そのものもお産をゆっくり行なう事でほとんどないし,裂傷しても自然治癒で治る程度の軽いものである事も判った。ゆっくり時間をかけて,勿論、助産の経験でその時間のかけ方もあるようだが、我慢しながら産むことの方が、妊婦にとってその後の経過からすると良いとの証言が得られた(6)高齢出産については,多くの助産師は普通の出産と変わりない。産める事は元気な証拠。しかし塩分等は控えめにするなどの助言が得られた(7)高齢出産のデメリットはデータ(統計等)通りに解釈した方が良いとの見方もある一方、データを気にする必要なしとの意見もあった(8)取り上げた高齢出産の人の中には50代の人もいた。結婚が遅くて子が生まれる場合は自然分娩で産まれている(9)その地域全体の出産に関わった助産師もいた(10)多くの助産師はその表情は生き生きと自信に満ち溢れており,その全てが助産をするときに実際に命を取り上げ、その母親を亡くしたことがないのを誇りにしている(11)これらの助産師が取り上げたお産の数は数千から1万人以上に達し,その技術・知識・智恵は計り知れない(12)しかし、このような開業助産院が年々消えていっている現状をみるのは大変惜しい。妊産婦や全女性にとっての出産場所の選択肢を狭める事に繋がると思われる。今後もこの調査を続けていく事が高齢出産をする人だけでなく出産する人々に大いに役立つ研究となると思われるので続行する予定である。平成13年度佐賀県下の3名の高齢助産婦(師)、平成14年度は大分県内の17名(1名は高齢ではない)に開き取り調査を直接行うことが出来、平成15年度は宮崎や沖縄の助産婦師に接触を続けている。その積み重ねで得られた結果が上記のとおりとなる。福岡県でも支部長ともかかわりを持つことが出来たが,今後も,発展的研究のため聞き取り調査続行に繋げたい。
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