研究概要 |
平成13年度 純粋なカゼインとグルコースを反応させた後、流水透析し、凍結乾燥後、修飾カゼイン試料とした。この修飾カゼインのアミノ酸を分析した結果、リジン残基の約50%が修飾されたことが分かった。さらに、これらのカゼインをペプシン・パンクレアチンで加水分解した後、分子量3,000KDa以下、3,000〜10,000KDa、10,000KDa以上に分けた。その結果、修飾カゼインの各ペプチドの画分の収率はそれぞれ、75%、5%および19%であり、低分子画分(分子量3,000以下)は未修飾に比べ、約20%減少した。また、HPLCで分析した結果、未修飾および修飾カゼインの分子量3,000以下のペプチドパターンに明確な差が認められた。修飾β-カゼインからは3種類の特異的なペプチド生成が認められた。さらに、β-カゼインの修飾により、血圧降下作用を示すアンジオテンシン転換酵素阻害ペプチドの生成が減少することも明らかになった。 平戊14年度 β-力ゼイン構造中のRDMPIペプチドを合成し、110℃、2時間グルコースで修飾した。その結果、グルコース修飾合成ペプチドのRDMPIの修飾パターンについて以下のことが明らかとなった:(1)HPLC分析の結果、修飾合成ペプチドと未修飾合成ペプチドでは明らかな差が認められた。修飾ペプチドより特異的に生成されたペプチドNo.1,No.2,No.3,No.4,No.5,No.6'はグルコースによって修飾されている可能性が高いと考えられた。(2)MS分析の結果、グルコースが修飾されている可能性のあるペプチドピークはNo.5のみであった。No.5においてアミノ酸配列RDMPI+1G、およびRDMPI+2Gに相当するマススペクトグラムが確認された。(3)Protein Sequencerによる分析の結果、No.5においてRDMPIのアミノ酸配列が確認された。1残基目のクロマトグラムにおけるアルギニンのピークが、他のクロマトグラムにおける各アミノ酸(D,M,P,I)のピークと比較して小さかった。したがって、アルギニン残基ε-アミノ基またはペプチドのN末端が修飾されたペプチドの存在が示唆された。
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