研究概要 |
本研究では,数学科の授業改善を目的として次の1.〜3.のような教材を開発した。また,中学校での授業,大学の教員養成課程での授業,現職教員の研究会での教材研究などにおける実践事例を通してその有効性を検証した。 1.中学校,高等学校の数学の授業において「数学的活動」を具体化するための教材。特に,数学的モデル化の過程を生徒に経験させるための教材に焦点をあてた。 ・「太陽の動き」「日影曲線と円錐曲線」「皆既日食」を題材とする教材の開発,春分・秋分や夏至・冬至付近の日影曲線の映像資料 ・「写真から実物の大きさを求める」「写真からその撮影場所を推測する」という課題からの発展と,その背景としての「画法幾何入門」 ・「地震の震央を求める問題」の数学的モデルとしての「三角錐の頂点から底面への垂線の足を求める問題」とその発展的な扱い ・「電車の速さ」を題材とする教材および実践事例,電車の発車時における映像資料と時間--移動距離のグラフ 2.数学科教員養成課程における授業の研究会で「数学的活動」について考えるための教材。 ・「規格紙を題材とする教材」「2つの円に接する円」等をテーマとする教師教育のための教材の開発 ・「面積の二等分問題」「比例の指導」「一次関数の指導」等をテーマとする大学の数学科教育法の教材開発とその実践事例 ・「袖の型紙」「地震の震央,震源」など数学的モデル化を取り入れた教材の教員養成課程の授業での扱い 3.島田茂著『教師のための問題集』をテキストとする「数学的モデル」「ひし形十二面体」についての研究及び学生のセミナーでの実践。 これらの研究を通して,数学的モデル化の過程を生徒に経験させるための教材は,その扱い通して生徒・学生にとってどのような数学の世界が広がったのかを明確にすることが,教材の価値を認識する上で重要な要素であることが指摘された。この視点から教材とその扱い方を見直し,これらを評価し直すとともに,事例の開発を継続することがが今後の課題である。
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