研究概要 |
【研究の目的】手の巧緻性を高める技能習得の基礎的資料を得るために,簡単で難易度が高い手作業である,はさみの円切断作業(小学生,大学生),ねじ締め作業(大学生)を選び,大学生と小学生の手作業のパフォーマンス,視覚情報,手首関節運動,技能習熟の観点から分析を行った. 【研究で得られた知見】円切断作業:大学生の円切断では1)切断時間と切断回数に正の相関が,むら(切断痕跡の太細)と切断回数の間に負の相関が,むらと切断中の紙の持ち替えの間に負の相関が見られた.2)切断面の痕跡は切断要点(器用な者と不器用な者の円切断の特徴から抽出したコツ)の指示後,痕跡のむらが滑らかになった.3)手首関節角度線図(橈・尺屈一掌・背屈)のパターンは切断要点の指示後,単純なパターンから複雑なパターンと変化した.小学生の円切断では,1)高学年では指示前と後で痕跡の滑らかさに差違が認められたが,低学年では指示前後の差違が高学年ほどはっきりしなかった.2)低学年では作業時間の遅い者ほどむらの数が増加し,はさみを使う技能が出来ていないことを示した.ねじ締め作業:ナットとねじの噛み合わせ動作では1)Purdue PegboardのAssemblyスコアーの上位者ほど作業時間は短く,上・中・下位の被験者間の作業時間は有意を示し,指先の鋭敏な感覚情報の影響がみられた.2)手首関節の橈屈・尺屈,掌屈・背屈の運動は上位の者ほど複雑であった. 【研究のまとめ】はさみの円切断作業,ねじ締め作業における手の巧級性は作業内容にもよるが,視覚情報と協応が手の運動に大きな要因となること,円切断作業の結果から小学生高学年では技能指導が可能と判断できたが,低学年では難しいことが明らかになった.
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