配分額 *注記 |
3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2003年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2002年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2001年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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研究概要 |
本研究の目的は,わが国の中学校数学科における授業の特徴を,学習者の観点からとらえた授業データの収集と分析を中心とする国際比較を通して解明し,数学科における望ましい指導のための基本的な指針を明らかにするとともに,数学科教員養成のあり方に対する提言を行うことである。 上記の目的のために,オーストラリア・ドイツ・日本・アメリカの第8学年(中学校第2学年)数学科授業について,収録されたビデオデータをデジタル化して処理し,授業後のインタビューデータとともに文字化(一部については英訳)して,各国の授業の構造的特徴や授業者・学習者の授業の知覚の分析を行った。 その結果,上記4カ国の授業を一連の授業系列のなかでみると,いずれも単一の型(「パターン」)には収まりにくい多様な様相を示すことが確認された。この結果は,TIMSSビデオスタディで特定された「授業の型」の意味を再考して授業の新しい分析単位を設定する必要があることを示している。そこで本研究では,授業の特徴を国際比較によって解明するための新しい手法として,観察上同一にみえる事象を特定し,その事象の形態と機能,および当事者の意図を分析・比較することを提案した。一方,授業者と学習者に対して授業後に実施した再生刺激インタビューのデータを分析した結果,授業において当事者が「重要な箇所」とみなす事象について,授業者と学習者間で一致する場合と一致しない場合の両方が確認され,この意味で授業の「構造」(分節とその連関)の知覚に違いがあることが明らかになった。この結果は,授業収録・分析において学習者の観点が欠かせないことを示すものである。 このような授業分析の結果を踏まえ,数学科における指導のための指針として,授業の相に応じた柔軟な授業設計と,固定化されがちな授業構造を反省的にとらえながら授業を設計・実施することの必要性が提案された。また,教員養成カリキュラムにおいても,学習者の観点を視野に入れた授業構想および授業分析の活動を取り入れることの重要性を指摘した。
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