研究概要 |
本研究の目的は,命題の構成的体系化という視点から,中学校数学科の論証指導カリキュラムを再構築することである。この目的の達成に向け,5つの課題を設定し,それぞれについて次の結論(概略)を得た。 課題I:中等学校数学図形領域のカリキュラム開発において,幾何学と空間の関係に着目するとすれば,どのような活動が必要であるか。 結論I:図形の性質や関係を演繹的に組織化するとともに,実験・実測によって推測し,証明後に検証すること,そして,身の回りの空間との対応性に基づいて,演繹の基になる諸命題の全称性を探る活動が必要である。 課題II:実験・実測による命題の全称性の確立にかかわる子どもの認識をとらえるために,どのような概念枠組みを構築できるか。 結論II:実験・実測による命題の全称性の確立にかかわる内的ゆらぎをとらえるための概念枠組みは,5つの代表的な様相(悲観論,楽観論,現実主義,素朴な予定調和,イデア論・目的論)と,8つの関係で構成される。 課題III:中学校数学科図形領域の論証において,命題の局所的準体系で演繹の基になる命題の全称性を探る活動は,どのような相を必要とするか。 結論III:次の6つの相が必要である。生徒が,演繹の基になる命題の全称性を認める。/局所的準体系全体を把握する。/演繹の基になる命題が準体系の諸命題の全称性を確立することを認める。/演繹の基になる命題の全称性に限界を意識する。/演繹の基になる命題の全称性を再確立する必要性を認める。/より確実な規準と論証に基づいて,演繹の基になる命題の全称性を再確立する。 課題IV:中学校数学図形領域において,命題の局所的準体系と現実の関係について,子どもの認識には,どのような状態があるか。 結論IV:直接的対応性に対する間接的対応性の優位性からみると,子どもの認識には4つの状態があり得る。
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