研究概要 |
情報通信技術の爆発的な進展に伴って情報通信機器の高度化とブラックボックス化が急速に進む今日、データ通信技術の原理や仕組みに対する知的好奇心を触発し、学習意欲を喚起する教材開発が求められている。本研究では無線データ通信の原理と仕組みに関する基本的な知識を理解し、技術を習得するための教材を開発を行い、その有効性に関する実践的な評価を試みた。 開発した教材はアマチュア通信衛星と呼ばれる通信実験衛星のテレメトリやホールオービットデータを受信・復調・解読するためのハードウェア(AX.25UIフレーム用ターミナルノードコントローラとASCIIデータデモジュレータ)とソフトウェア(Windows用テレメトリ受信・解読ソフトとコマンドライン型テレメトリ・WOD解読ソフト)で構成され、工業高校の生徒や工科系大学・工業高専の学生は非同期方式(EIA-232C)および同期方式(HDLC)による無線データ通信の基本的な原理と仕組み(同期、符号化、誤り検出・訂正、プロトコル、変復調、アクセス方式など)を実験・実習を通じて学習することができる。ハードウェアの開発にはPICと呼ばれるワンチップマイクロコンピュータを使用した。PCIはCPU、ROM、RAM、SIOなどがワンチップに統合され、フラッシュメモリタイプのPICは何度もプログラムの書き換えができるので教材開発には最適であることが確かめられた。PICのファームウェアとテレメトリ解読ソフトウェアはC言語で作成し、生徒や学生が自ら修正・改良することで試行錯誤や課題解決などが容易に図れるように工夫した。 本研究で開発した教材の教育効果を評価するため,筆者の勤務校において学生実験を試みた。学生の教材に対する評価は良好で、実験レポートの分析から、学習の動機付け、知識の定着、理解の向上、解析手法の習得などに関して従来の教材よりもすぐれた教育効果を確認することができた。
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