研究概要 |
研究の概要(文書の審美的印象度を判断する感性ビジョンシステム) 個性的できれいに書かれた文書から,私たちは,書き手の人柄や親近感のような,伝えようとする内容を超える細やかな心情までも感じ取る。競争よりは共生,精神的にもゆとりある豊かな社会のためにも,場面,状況にふさわしい美しい筆跡やデザイン装飾文書の果たす役割は大きい。 本研究では,手書き文書の美醜や書き手の個性を抽出,判断するシステム,感性ビジョンシステムの構築を試みる。複数の書き手による文書を収集して,目視評価により各文書を分析・評価して美文書データベースを作成する。文書の濃淡の周辺分布状況や空間周波数領域での信号処理により,文書特徴量の抽出を試みる。これらの特徴量から,人間が文書から受け取る感覚的印象の定式化と美文書評価を試みる。 研究成果 イメージスキャナとディジタルカメラにより文書を電子化する。電子化文書は,フルカラー画像,400[dpi]以上の分解能とする。イメージスキャナに比べて,ディジタルカメラの場合は,照明条件が難しかった。文書処理は,正規化や濃度変換などの画像処理手法を援用する。 審美的印象度の抽出・評価の事例として,今年度は,絵画の印象度評価を試みた。色彩に注目し,人間が感じる印象を,マンセル色空間のトーン空間上に仮定して印象度抽出を試みた。著名な絵画について試行実験したところ,人間の感じ取る印象とほぼ一致する結果が得られた。 これらの知見に基づき,活字体や手書き文書の印象度抽出を試みる。ここでは,明朝体,グシック体や隷書などの各種の書体識別を試みた。256階調書体画像を二値化した後に,輪郭線を抽出し,点列をフリーマンコードによりコード化する。コード化点列の角度変化に基づき曲点,角点抽出を試み,直線性を評価する。書体ごとの直線性から,書体の自動識別手法を提案した。
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