研究概要 |
本研究は,視覚障害者のためのマルチメディア端末を開発することを目的として進められた.一般的に,視覚障害者が画像情報を理解するためには,レーズライターと呼ばれる鉄筆などで強く描くと盛り上がってくる紙や,立体コピー機で作成された触図などを用いることが多い.更に触知ピンマトリクスを用いた,点字ディスプレイの集合体のような触覚ディスプレイも存在する.触覚ディスプレイを用いると,瞬時に画像情報を変化させることもできる.我々の開発したシステムは,触覚ディスプレイとコンピュータ,アームで接続されたペン型の入力デバイスから構成される.ペンを用いることで,視覚障害者は触知面に直接位置情報を入力することができ,これが本システムの大きな特徴となっている.すなわち,使用者が任意の位置を指示すると,それに対応して触覚ディスプレイが振動したり,変化したり,音を出したりといったフィードバックを生成することができるわけである.システム用のソフトウェアとしては,描画,ピンポンゲーム,漢字学習ソフトなどを製作した.描画ソフトを用いると,ペンで触知面に直接線画を描いたり,消去したりすることができる.ピンポンゲームは,ピンで表現されたボールを指で追い,ペンにより制御されるラケットで打ち返すものである.漢字学習ソフトでは,部首の意味や発音を学習することができる.部首の位置を指し示すと,その部首が点滅する.それによりまとまりを理解し,さらにボタンを押すと部首の呼び方が発音される.開発したシステムは,いくつかの盲学校において評価を受けた.その結果,ピンポンゲームが非常に興味を持たれ,学習ソフトについても必要なものであるとコメントされた.特に盲学校の視覚障害を持つ教官は,漢字の知識を習得できるシステムについて興味を持ったようであった.一方,触覚ディスプレイの解像度については,更に細かいものが要求された.
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