研究概要 |
学習者の途中計算(文字式)に対するコメント表示機能を有する演習支援システムを用いて、分数式計算の個別演習を行ったところ、低進度学生は、システムの提供するコメントを頼りに学習を進めることが難しいことが分かった。これら低進度学生の特徴は、数(分数)の計算はできるものの、文字式(分数式)の計算を苦手とすることである。彼らの多くは、計算原理の理解が不十分で、計算原理を意識することなく、パターン・マッチングで計算する習慣を持つ。 そこで、計算原理の理解が不十分な学生を検出し個別に助言を与えるために、分数式計算の誤りの原因を分類する(計算途中で発生するケアレス・ミスを、誤った式変形ルールによる誤り等と分離する)方法を考案し、演習支援システムに組み込んだ。また、これらの学生に対する助言機能として、式変形を一ステップずつ、その計算原理を説明しながら式変形の結果を示すインタラクティブな「計算法解説」ページと、計算演習において,学習者が誤った計算原理による計算ステップを行ったときに,その計算ステップの含む原理的な誤りを、数値を代入した例を示して指摘し,計算法学習の必要性を実感させる「誤解解消」ページを作成,システムに実装した。 改良システムを、上記、低進度学生を対象に、同ページを用いた演習を行ったところ、システム利用者には低成績学生が少なく、同システム利用の低進度学生に対する支援効果を示唆する結果となった。 最後に、計算誤りを含む他者の計算過程を評価させることが、理解度確認のために有効であるとの新しい知見を得られたので、他者の計算過程を評価する形式の演習を、演習支援システムに組み込むことにした。計算演習と補完的に利用することにより、分数式計算の低進度学生に対する支援効果が、より向上することを期待できる。
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