研究概要 |
近年の青少年の喫煙・飲酒・薬物乱用問題の深刻化にともない,学校教育における有効な防止教育への期待が高まってきている。我が国でも最近になって,妥当な行動科学の理論に基づいた喫煙・飲酒・薬物乱用防止プログラムや教材が開発され,広く利用できるようになってきているが,そうしたプログラムや教材を普及するためには,現職教師に対する指導者研修が極めて重要な役割を果たすものと考えられる。 そこで本研究では,行動変容に有効な喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育を教師が適切に実施するために必要な能力を形成できるように,ワークショップ(参加型の研修会)を企画・実施し,その有効性を評価した。また,教育委員会等の主催者がそれぞれのニーズに合ったタイプのワークショップを選択できるように,複数のタイプのワークショップ(複数の講師によって2日連続で実施される10時間のワークショップ,1人の講師によって2日連続で実施される7.5時間のワークショップ,複数の講師によって数日間の間隔を置いて3日間実施される9時間のワークショップ)を考案し,その有効性を比較検討した。 ワークショップの前後に実施した質問紙調査の結果によれば,いずれのタイプのワークショップの参加者もワークショップを肯定的に評価し,薬物乱用防止教育を実施する自信がある者の割合も研修前に比べて研修後は大幅に増加したことより,ワークショップの有効性が示唆された。また,ワークショップに対する評価と研修後の自信との間に関係、があること,わかりやすかった,楽しかったといった評価が高いワークショップ程,研修後の時点において自信のある者の割合が多いことから,講師の人数や実施間隔といったワークショップの形態よりも,内容や方法自体がより重要であることが確認された。
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