研究概要 |
1.数学教育の立場から、(1)論理的思考の捉え方の分析、(2)論理的思考の実態調査、(3)国語科との総合教育を可能にする数学教育からのアプローチの研究をおこなった。(1)については、論理的思考として、常識的に演繹・帰納・類推が考えられること、数学教育においては「筋道を立てて考える」が捉えられていること、「筋道を立てて考える」の守備範囲に論理的思考の捉え方は依存することを明らかにした。(2)については、類推による説明に正しく反応する割合は,文系の学生の方が理系の学生より高いことなどが明らかになり、類推を論理的思考に含めるかどうかの1つの判断材料が得られた。(3)については、トゥールミンの論証モデルを数学教育に利用できるかを分析し、いくつかの修正を加えることで利用可能かつ有効であることを明らかにした。 2.国語教育の立場から、(4)論理的思考の捉え方の分析、(5)数学科との総合教育を可能にする国語教育からのアプローチの研究をおこなった。(4)については、国語科の学習指導要領における論理的思考は文章の彩り方という面が強いのに対して,数学教育との総合教育の観点からは、言語技術教育,言語論理教育,一般言語理論などが有効であることを明らかにした。これらは日常的な議論を対象として解釈される論理的思考と捉えることができ、数学教育の形式論理と直接結びついていたり、深い関連性を持っていることが指摘できた。(5)については、わが国における言語技術教育及び欧米の(批判的)思考教育の教材や指導法が総合教育にどのように有効に働き得るかを明らかにした。 3.論理的思考の実態についての資料は蓄積をしていくことが必要である。このため、論理的思考に関する調査的研究のデータベースを作成し、自前のサーバーを構築して、Web上に公開した。
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