研究概要 |
1.計量的な色彩分析のための基礎理論の検討 OSA-UCSとXYZ表色系との間の相互色値変換アルゴリズムの開発,PCCS表色値とマンセル表色値の数学的関係に関する研究,およびマンセル表色系とXYZ表色系間の近似的な2つの変換方法(MTM, SVF)についての評価を行なった.また,NCS色空間に距離の概念を導入し,NCS色空間における統計分析を可能にした. 2.ディジタルカメラによる美術作品の色彩情報の取得に関する検討 市販ディジタルカメラの撮影画像から,測色値を推定する研究を行なった.実際に,国立歴史民俗博物館所蔵の錦絵資料を撮影し,実用に耐える精度で色彩画像が記録できることを示した. 3.美術作品における色彩情報の計量分析 色彩画像分析の手法として,空間的色変化の粗密をウエーブレット変換によってとらえる手法,および空間的色変化の構造を知るためのグラデーション領域抽出およびグラデーションの種類の分類方法を開発した.西洋絵画約200点を対象にこれらの分析を行ない,絵画作品における典型的な色変化の特徴を明らかにした. 日本の伝統色彩に関して,中世貴族の女房装束に用いられた「かさね色目」の分析を行なったところ,配色に関するいくつかの特徴的なパターンを抽出することができた.また,国立歴史民俗博物館所蔵のきもの資料について色彩分析を試み,特徴的な情報がいくつか見出された. 4.色彩研究者・学習者向けの色彩分析システム"Colorcer"の開発 美術・色彩の研究者・教育者・学習者のために,パーソナルコンピュータ上で動作する色彩分析システムColorcelを開発した.色情報の可視化や,異なる表色系間の表色値変換を簡単に行うことができる.現在公開に向けて準備中である. 5.Michel Albert-Vanel氏(フランス色彩連盟会長)との共同研究 海外共同研究者のMichel Albert-Vanel氏と共同研究を行なった.2002年4月にフランスで打ち合わせを行なった後,11月に氏を日本に招聘し,10日間にわたって,配色分類のための配色空間,および絵画における色彩構成の分析と応用に関して集中的に討議を行ない,共同研究を実施した.
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