研究概要 |
本研究は,藤田保健衛生大学,東邦大学,東京女子医大,河合医院,その他多くの企業の皮膚科学研究者との共同研究として遂行された.得られた成果の主なものは次の通りである.(1)皮膚刺激性のパッチテスト判定に写真試料を使った場合,企業での経験が長い人は比較的安定した判定を下すが,経験の浅い人は判定の再現性が悪い.皮膚科医の場合,人による判定の違いが大きい.従って,然るべき教育を通して判定基準の統一化を図る必要がある.(2)肉眼判定と写真判定には,手触りや湿り気といった微妙な情報がないためと思われるずれが少し生じるので,写真資料による教育には注意が必要である.(3)かゆみ・ヒリヒリ感・かさつき,といった皮膚刺激性の面で市販されているシャンプーを分類すると,おおよそ4,5種類の違ったタイプのものがある.どの成分が影響しているかはまだ不明である.(4)皮膚刺激性評価の代替法として提案されている3次元ヒト皮膚モデルにおけるスコア(ET50)の推定法としては,時点数が大きいときはモデルに基づく方法が良いが,時点数が3という程度に小さいときは,時間の対数に対して直線を当てはめる方法が頑健である.(5)刺激性をヒトの左右の頬で評価するときの最も大きな撹乱要因は順序効果である.これらの研究結果は,米国のニューオーリンズでの世界動物実験代替法世界会議,東京で開催された日本接触皮膚炎学会,東京で開催された日本動物実験代替法学会,東京で開かれた日本香粧品科学会,日本動物実験代替法学会誌に発表されている.
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