研究概要 |
探索的射影追跡とは,指標追跡指標の最大化を通して多次元観測データをより低い次元の部分空間に射影し,それによりデータに内在する非正規・非線形構造を抽出し理解するための方法論である.計算機および数値最適化手法の発展により,探索的射影追跡の数値アルゴリズムは近年発展しているが,一方で推測統計の立場での研究はほとんどなされていない.本研究の目的は,探索的射影追跡手法の推測統計の立場からの実用化を図ることである. その目的のための第一歩として必要なことは,射影追跡指標の最大値分布を確定することである.初年度においては,代表的な射影追跡指標の一つであるモーメント指標(Jones and Sibson,1987,J. Roy. Statist. Soc.,Ser. A)の最大値の,サンプルサイズが無限大に近づくときの極限分布を正規確率場の最大値として特徴づけ,その最大値分布の上側裾確率の近似公式をチューブ法(オイラー標数法)と呼ばれる積分幾何学的手法によって導出した.確率場の添字集合を正規確率場の相関構造から定義される計量構造を持ったリーマン部分多様体とみなし(これを添字多様体と呼ぶ),その幾何量として上側裾確率近似公式を導出した. また次年度においては得られた近似公式の誤差評価を行った.上側裾確率近似公式の誤差は添字多様体の臨界半径(リーマン部分多様体の凸性を測る指標)によって決定される.大規模な数値計算によって臨界半径の値を予想することができたが,その値が真に臨界半径であるかどうかの数学的な証明には至っていない. これらの研究結果は第3回多重比較国際会議(MCP2002,米国メリーランド州,2002年8月)において報告された.
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