研究概要 |
記憶,学習,注意,意識などの脳の高次機能の人工ニューラルネットワークを用いた研究は,高等動物の脳機能の理解や情報処理能力を解明する上で重要であり,人類の究極の研究謀題である.我々は,昨年度に続いて,視覚の選択的注意と意識に関する数理モデル化の研究を行った.まず,DesimoneとDuncanの仮説に基づき,FitzHugh-Nagumoニューロンを用いた2層ニューラルネットワークを構築し,視覚の選択的注意の研究を行った.すなわち,海馬体と視覚皮質に関する視覚の選択的注意の数理モデルを作り,数値実験により2層のニューロン集団間こ発火時間に関してガンマ振動の同期現象が起こることを示し,注意に対する一つの解釈を与えた.(ICONIP'02で発表,Proceedings of the ICONIP'02,Vbl3,1602(2002)).さらに,Hodgkin-Huxleyニューロンを用いた数理モデルを構築し,FitzHugh-Nagumoニューロンを用いた数理モデルとの比較を行った(信学技報,NC2002-120,19(2003)).注意や意識機構に対するCrickによる仮説の一部とDesimoneとDuncanの仮説を併せた数理モデルを提案し,数値実験を行い,その結果を学術雑誌に発表のための原稿を現在作成中である.また,記憶に関する海馬系の3層,4層,5層モデルを提案した(Proceeding of the ICONIP'02,Vol.1,343(2002),信学技報,NC2002-120,17(2003)).FitzHugh-Nagumoニユーロンを用いた2層ニューラルネットワークモデルを提案し,テータ振動とガンマ振動の発現に関する研究を行った(Proceedings of the ICONIP'02,Vo1.3,1597(2002)).現在,Crickのサーチライト仮説に基づき,意識の数理モデルを考案し,その性質を解明中である.
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